✓ 泌尿器癌に対する治療
前立腺癌
PSA高値にてご紹介いただいた場合、ご相談の上、まずは前立腺生検を予定いたします。外来にて経直腸的にエコーガイド下で12箇所針を刺し、組織を採取し、癌の有無を確認します。
当科では前立腺癌に対する根治療法として、手術支援ロボットダビンチを用いたロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術、放射線照射(外照射)を行っています。ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術は10~11日間の入院で行います。従来の開放手術に比べ出血量が少なく、尿禁制にも優れた手術方法です。放射線照射は1.5カ月程度、原則として平日毎日の外来通院で施行いたします。いずれも内分泌療法を併用する場合があります。
根治療法が適応とならない患者さん(進行癌、高齢の方、重篤な基礎疾患をお持ちの方など)に対しては内分泌療法を中心とした治療を施行いたします。治療の継続が必要であるため、一次医療機関と協力して行います。
内分泌療法に対して抵抗性となった場合、新規抗アンドロゲン薬(アビラテロン、エンザルタミド)や抗癌剤(ドセタキセル、カバジタキセル)、放射性医薬品(ラジウム-223、ストロンチウム-89)などを用いた集学的治療を行っています。
腎癌
可能な限り手術にて治療を行います。当科では15年以上前から腹腔鏡下手術を取り入れており、標準的治療としています。術式は患者さんの病状によって検討いたします(腎摘出術or部分切除、腹腔鏡手術or開放手術)。部分切除術については癌の状態により、手術支援ロボットダビンチを使った手術を行っています。手術ですべての病巣を切除出来ない場合、分子標的薬治療(スニチニブ、パゾパニブ、ソラフェニブ、アキシチニブ、エベロリムス、テムシロリムス)、免疫療法(ニボルマブ)を行います。
膀胱癌
まず腰椎麻酔下に経尿道的膀胱腫瘍切除術を行い、組織型、悪性度、深達度を診断いたします。膀胱癌は表在癌であっても再発率50%以上と大変再発しやすい癌です。表在癌であれば、術後膀胱内抗がん剤注入療法を行い再発予防に努めます。場合によってはその後外来にてBCG膀胱内注入療法を行います。
浸潤癌の場合、膀胱全摘術を中心とした治療を考慮いたします。進行度によってはより根治性を高めるため、術前化学療法をお勧めしています。生活の質を保つべく、膀胱全摘後の尿路再建は回腸利用新膀胱を第一に考えておりますが、回腸導管や尿管皮膚瘻も行っています。
化学療法は転移のある患者様に対して、もしくは手術前後の補助療法として行なっています。GC療法(ジェムシタビン+シスプラチン、腎機能低下がある場合はカルボプラチン)、HD-MVAC療法(メソトレキセート、ビンブラスチン、ドキソルビシン、シスプラチン)を行なっています。
腎盂癌、尿管癌
腎尿管全摘術が第一選択となります。当科では腹腔鏡下手術を併用し、可能な限り低侵襲な治療を目指しております。上皮内癌の場合、尿管ステント(膀胱から腎臓まで挿入する細い管)挿入の上、上部尿路に対するBCG注入療法を行っております。
転移のある患者さん、もしくは手術前後の補助療法が必要な患者さんには化学療法を行っています。
精巣癌
まず高位精巣摘出術を受けていただき、組織型、深達度を診断いたします。あわせてCTなどの画像検査にて進行度を診断し、その後の化学療法、放射線療法、後腹膜リンパ節郭清の必要性を検討します。
✓ 尿路結石に対する治療
腎・尿管結石
腎に結石があるだけでは症状をきたしません。しかし、結石が動いて尿管にはまり込むことで痛みを引き起こします。小さい結石の場合は自然排石が期待できますが、大きな結石の場合、手術が必要となる場合があります。腎にある結石でも、大きくなると腎機能低下、感染などの問題を引き起こしますので、手術が必要となります。結石のサイズ、位置により、数種類の治療を組み合わせて行う場合があります。
体外衝撃波破砕術:体の外から衝撃波を当てて結石を砕く治療です。外来にて痛み止めを用いて施行します。1回1時間程度の治療となります。1回で破砕される場合もありますが、何度か治療が必要な場合もあります。腎・上部~中部尿管の比較的小さめの結石が良い適応となります。大きい結石に対して施行する場合、砕けた結石が尿管に詰まってしまい、尿管が閉塞することがありますので、尿管ステント(膀胱から腎臓まで挿入する細い管)の挿入を同時に行う必要があります。
経尿道的尿路結石砕石術:手術室で麻酔下に、経尿道的にカメラを挿入し、結石を砕石、除去する手術です。3-4日の入院で行います。結石の位置、サイズによっては、1回の治療で結石をすべて取りきれる可能性が高い治療方法です。中部~下部の尿管結石が良い適応となります。
経皮的腎結石砕石術:手術室で全身麻酔下に、背中から腎臓に直接管を挿入し、そこからカメラを挿入して結石を砕石、除去する手術です。大きな腎結石が良い適応となります。7日間程度の入院が必要となります。
結石が無くなった後は、一次医療機関と協力しながら経過観察を行っております。
✓ 腎不全に対する治療
急性腎不全に対する治療
持続的血液ろ過透析を中心とした全身管理を行っています。内科・外科など他科からの依頼をうけて透析管理を行うこともあります。
慢性腎不全に対する治療
長期間かけて失われた腎機能はその後回復することはありません。そのため、まず腎代替療法が必要な状態に陥らないよう、栄養指導、血圧管理、血糖管理などを一次医療機関・当院内科と協力しながら行っています。腎代替療法が必要となった患者さんには血液透析、腹膜透析、腎移植についてご説明し、準備を進めます。当院では、以下の3種類の治療が全て施行可能です。
血液透析
血液透析は、週3回、4時間前後、血液を機械できれいにして体に戻す治療方法です。まず腕の血管を手術し、血流を導くための血管を作成します。その後1-2週間の入院で血液透析の導入を行います。導入後は維持透析施設へ移っていただき、血液透析を継続していきます。
腹膜透析
腹膜透析は、腹膜(おなかの中で臓器と腹腔を隔てる膜)を介して血液中の老廃物を除去する治療方法です。治療に先立ち、おなかにチューブを留置する手術を受けていただき、腹膜透析を導入します。1-2週間程度の入院が必要です。退院後は毎日自宅でチューブと機械の操作を行うことで透析を行います。そのため通院は月1回程度で済みます。
腎移植
他の方の腎臓を移植することで、失われた腎機能を取り戻す治療方法です。腎代替療法の中で腎移植は最も予後に優れ、生活の質が高い治療方法です。心停止もしくは脳死になられた方から提供を受ける献腎移植と、お元気な方から片方の腎臓を提供してもらう生体腎移植があります。当院では生体腎移植を行なっています。提供者(ドナー)になれるのは6親等以内のご親族です。お元気で腎機能がよく、感染症、悪性疾患がない方ならほとんどどなたでもドナーになれます(近年多いのは50-60歳代の夫婦間移植です)。血液型が一致していなくても移植は可能です。当院では秋田大学泌尿器科と連携して治療に当たっており、H25年から10組の方に腎移植を受けていただきました。こちらから、腎移植を受けられた患者様の体験談をご覧いただくことができます。H29年8月より毎週火曜日に移植外来を開設しています。ご興味をお持ちの方はお気軽にご相談ください。
血液透析中の患者さんのシャントトラブル
血液透析中の患者様にとってシャント血管の狭窄、閉塞は大きな問題です。シャント不全に対する経皮的血管拡張術(PTA)を積極的に行ない、現在のシャントをできる限り長期間にわたって使用できるような治療を心がけています。また必要に応じてシャント再建、人工血管を用いたブラッドアクセス作成、上腕動脈表在化などを行っています。血管が細い方、あまり無い方に対する複雑なブラッドアクセス手術も行なっており、県南の透析施設から広く患者さまのご紹介をしていただいております。脱血不良、静脈圧上昇、穿刺困難など、どのようなアクセストラブルにでも対応いたします。
また狭窄しやすい患者様にはシャント血管の定期診察を行なっています。
【透析施設の先生方へ】(シャント外来FAX紹介について)
簡便な紹介状をご用意しました。必要事項を記載の上、当院紹介センターまでFAXしていただきますと、早急にこちらからご連絡いたします。月曜日から金曜日まで(祝日等休診日を除く)、緊急性の有無にかかわらず対応いたしますので、ぜひご利用ください。緊急時は今まで通り泌尿器科外来にお電話いただければすぐ対応いたします。
※FAX回答は平日の8:30~17:15になりますのでご了承願います。時間外に受付したFAXは翌平日に泌尿器外来から貴院へ連絡いたします。
シャント外来紹介状(診療情報提供書兼診療申込書) エクセル版 、 PDF版
✓ 男性の前立腺肥大症に対する手術
前立腺肥大症に対しては前立腺を内側から削る手術(経尿道的前立腺切除術)、大きな前立腺肥大症に対しては前立腺をくりぬく手術(前立腺被膜下摘出術)を行っています。入院期間は経尿道的前立腺切除術で7日間程度、前立腺被膜下摘出術で10日間程度です。
✓ 女性の骨盤臓器脱手術(膀胱瘤・子宮脱・直腸脱)、腹圧性尿失禁に対する手術
骨盤臓器脱とは
骨盤にある臓器(子宮、膀胱、直腸など)が下がってきて、膣から外に出てしまう病態です。出産や加齢などにより、骨盤内臓器を支えている骨盤底の靭帯、筋肉などが緩んで発生します。症状としては膣の方に何かが下垂してきたような感覚や、膣から触れる、股の間に挟まった感じ、などです。薬では改善しないため、生活上お困りになる場合は手術を検討して良いでしょう。
人工物を使用しないで脆弱化した組織を縫縮したり、組織を切除したりする手術方法は旧来から行われてきました。人工物を使用した際に起こりうる特有の合併症はありませんが、再発率が30%程度と高いものでした。近年開発されたポリプロピレン製のメッシュを用いて脆弱化した部分を補強する手術は再発率が低く、現在骨盤内臓器脱手術の主流になりつつあります。メッシュを用いた手術は経膣的手術と経腹的手術に大きく分けられます。
当院では経膣的手術としてTVM-A、膣閉鎖術、経腹的手術として腹腔鏡下仙骨膣固定術を行なっています。
TVM-Aは膣前壁を切開してメッシュを挿入する方法で、手術時間が短く体への負担が少ないですが、まれに術後のメッシュの露出、性行時痛などの可能性があり、子宮脱、直腸脱が強い方には効果が不十分である場合があります。
それに対して腹腔鏡下仙骨膣固定術は、全身麻酔で数時間の手術となりますが、すべての種類の骨盤臓器脱に適応があり、性行時痛が少ないとされています。再発率は数%と成績が大変良好で、傷が小さく済むことも特徴の一つです。
超高齢の方、併存疾患の多い方には膣閉鎖術も行っています。
メッシュを使用した手術を受けられる施設は岩手県内では少なく、特に腹腔鏡下仙骨膣固定術を行なっているのは東北地方でも数施設のみです。ご年齢や活動度、骨盤臓器脱のタイプによって患者様に合わせた術式をお勧めしています。
腹圧性尿失禁とは
くしゃみや重い物を持った時に起こるタイプの尿失禁です。膣前壁から尿道にテープ状のメッシュを当てる尿禁制手術を行っています。